介護は誰でも出来る仕事 PART3
前回は、当施設の職員採用方法を説明し、面接の中で感じた「専門性」とは何かについて私感を述べました。今回は、採用後に感じた「専門性」について述べたいと思います。当施設は、前回記載した方法で職員の採用を決めています。採用に当たっては、何より大切にしていることは、「私たちで作り上げた理念に共感できること」、そして本人より「ここで働きたい、働けるという気持ちが持てること」です。人手不足が続く中、「大丈夫かな?」と感じつつも、それでも、「仕事をする中で、きっと同じ理念で働いてもらえるだろう」と、今まで何人かの方を採用してきました。 介護福祉士の資格を有し、「大きな組織で働いてきた人」、「長年、介護職として勤務してきた方」等々、面接時、「自信があります」、「頑張れます」と言われた方を採用しました。ですが、残念ながら、多くの方は、継続して勤務することが出来ませんでした。 長年、他組織で働いてきた方より、退職の相談を受けた際に発せられるのは、「こんなに頭を使う仕事とは思わなかった」、「精神的にとても辛い」等々の言葉でした。私どもの施設のご利用者様は、現在のところ、比較的介護度が軽く、体重を支えなければならない介護や、パットやリハビリパンツの交換の支援等はあるものの、おむつ交換を求められるご利用者様はおらず、肉体的に辛いはずはないため、「なぜ辛いのだろう」と問い直すと、「今まで従事してきた施設では、上司より『「今日の午前は~して下さい。午後の係は~です』と指示され、働く内容が決められていた」とのこと、そのため、「ご利用者様と何を話したらよいのか分からない」、「ご利用者様との話が続かない」、「当施設で他の職員が忙しく働いている中、何をしてよいのか分からない自分の状況が辛い」と言われます。ですが、新規採用した職員には必要なオリエンテーションは行っていますし、現在、在籍している職員にも特別のマニュアルがあるわけではありません。それぞれの職員が、自身の判断で、ご利用者様のために「今、自分は何をすることが求められているのか」、「他のスタッフは~しているから、私は~をしよう」等々を、自分で『考え』、業務に当たっていています。 私たちのデイサービスでは、フィリピン出身の特定技能実習生が1名在籍しています。母国で看護大学を卒業し、当市で7年間生活、いろんな方の推薦を受け当デイサービスで働いて2年を過ぎました。日本語に関しては、まだまだおぼつかないところがあり、日本語の機微なニュアンスが通じず言語的コミュニケーション能力については、日本人より劣ると思います。しかしながら、「ご利用者様の気持ちに寄り添おうとする努力」と、「ご利用者様の求めること、また、チームの一員として求められていることを察する力」は優れていて、そのため、ご利用者様からは慕われ、働く仲間からの信頼も得ており、
「ここの仕事は楽しい」と言ってくれています。 「言われたことをする」「係が決まっている」、午前中に10人も入浴介助をするような仕事は、肉体的にはハードかもしれませんが、ひょっとしたら精神的には楽かもしれません。ですが、言われなくても、指示されなくても、「今」、「働く者として」、「何が求められているのか」を理解する力を持つことが、「専門性」の第1歩であり、これを瞬時に判断できるものは、決して有する「資格」ではなく、その人の「人間力」だと思います。